NX Nastranにおける固着(GLUE)の応用範囲と制限
固着(GLUE)とは
固着とは、異なるメッシュパターンの面をあたかも接着したかのように構造的熱的に 接合する機能です。NX Nastranでの固着面は、エレメントの面、プロパティ、あるいはジオメトリをベースに定義できます。固着面はコンタクトと同様、リージョンと呼ばれるエンティティで管理されます。固着の特性はコンタクトプロパティど同じダイアログボックスを通じて設定することができます。
下図は、四隅を拘束下板(シェル要素)の上にゴムのような塊(ソリッド要素)は張り付いて いるものの固着定義例を示します。
シェル要素は四辺形要素で、ソリッドは二次四面体 要素でモデル化しており、メッシュは一致していないことを注目してください。
さらに結合部分の剛性や熱伝導率を定義することができます。これによってあたかも接着 剤や発泡材が介在しているような解析や、接触熱伝導のような解析ができます。
固着のメリット
固着は幅広く使用できます。たとえば、別々に作成されたモデルを接触面で固着し、一体物 として解析できます。元々モデルが別に作成されていれば、片方のモデルの修正がとても容 易に行えます。この場合、各ジオメトリベースで作成されていればさらに効果的です。
メッシュを接合する必要がないので、モデルの規模を小さく押さえることができます。これ はメッシュの接続箇所でメッシュが一致している必要がないためです。結果としてモデリン グの自由度が向上します。
固着機能は適用範囲を選びません。静解析から動解析まで幅広く使用できます。
下図は固着が非常に役に立つ例です。配管枕板の上面に大きなピンが溶接されています。 このようなモデルをすべてソリッドで作成すると、メッシュ数が莫大になるうえ、作成も面 倒で、接線部分のになります。また、特にピンは円板の縁に接して配置されるので、ソリッド モデルではメッシュが非常にいびつになってしまいます。
固着のよい点として、面が一致していなくても固着してくれることがあります。この機能を 使って、圧力容器は中立面上のシェル要素で作成し、ピンはソリッド要素として作成するこ とができます。ピンとフランジの接続、フランジ間の接続は固着を使って定義します。
解析結果を下図に示します。
固着モデルでは、ピンの数と形状を変更して効果を見ることも簡単にできます。 さらにバルクヘッドの円盤フランジを補強する方法を検討するとき、別に作ったリブのモ デルを固着して、ケーススタディを簡単に行うことができます。
ただし、固着を使うと精度面で劣化することがあるので、精密な検討が必要な場合には、や はりフルモデルを作る必要があるかもしれません。それでもケーススタディ段階で固着を使 うことは時間と手間の大幅な節約になるでしょう。
固着の主なメリット
- モデル作成の効率化
- 不整合メッシュの結合(構造、熱)
- 結合(接着)剛性の直接定義
- サーマルコンパウンドや接触による熱伝達
- 部分モデル変更のケーススタディの容易化
- ズーミング解析
固着利用の制限事項
固着の制限事項は以下の通りです。
- 非線形性解析(SOL106)では、変形や材料特性の変化に追従しません。このため、幾何学非線形が作用したり、材料非線形が関係する部分で固着は使用しないでください。
- 線形静解析以外では、サブケースのある解析では固着はマスターケースか、ケース1で指定され、すべてのサブケースで同じ条件で考慮するようにしなければなりません。
- 線形静解析では任意のサブケースで定義できます。同時に線形静解析では線形コンタクトと同時に使用できます。
- 固着そのままでは剛性に関してはやや高めになる傾向があります。この場合、固着剛性の定義で緩和することができます。
- 空力弾性解析では使用できません。
- 音響流体間の固着はできません。
- 熱解析では一定の熱伝導率で結合されます。
特に非線形解析で形状変形が大きい場合、固着箇所の回転変位が大きくなると、ある角度で 急激に変形に対し、抵抗する力が作用するようになります。なお、解析そのものは実行できま すので、固着を使用する場合、角度変位で5°以下、ひずみでは1%程度までの部位に使用して ください。
固着利用の留意点
フットプリントの一致
すでに触れたように固着は大変便利なのですが、いくつか注意すべき点があります。ひとつは接続面のメッシュ同士の細かさです。固着は非常に大きさの異なるエレメントフェイス同士でも結合できます。メッシュの大きさがずれる場合の問題点は結合部分の剛性が実際より も大きくなってしまうことです。結合部分の剛性が、解析したい荷重条件ではあまり大きく 影響しない場合にはそれでも良いのですが、通常はメッシュのサイズを合わせておいた方がよいでしょう。特に片方のフットプリントとなる部分はメッシュパターンが一致していなく てもよいので、形状を合わせておくほうがよいでしょう
固着のメッシュ数についての留意点
固着面は少なくとも縦横2つのエレメントフェイスで構成するようにしてください。 エレメントフェイスが少ないと剛性がうまく構成されず、回転したり、計算できなかったり します。
また、固着面同士に間隙がある場合、探査距離を十分大きく取り、固着面が正しく見つかるように します。このとき、面同士の間の距離と同じか、わずかに大きい値を定義すると良いでしょう。
ただし固着は本来、ほとんど重なった状態にある面の間に定義するものです。 固着面の間に大きな隙間がある場合、Femap with NX Nastran v10.02(NX Nastran v6.1)以降と 以前で挙動が大きく異なります。NX Nastran v6.1以降ではより現実的な挙動を示します。
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