金属のクリープ現象とクリープモデル

クリープとは

樹脂のブッシュなどが長い間ねじで圧縮されていると、座面部分に跡がついているのをご らんになったことがあるでしょう。ねじの締め込み力が材料の塑性域にあるときは当然こ のような現象がおこりますが、弾性域と見なせる程度の力でも座面の跡がつくことがありま す。 このような場合には、ねじを締め込んだあと、すぐに緩めると座面の跡はついていませ んが、締め込んだあと、長い間放置すると跡がつきます。 
このような現象をクリープ現象と呼びます。

クリープは樹脂材料の他、金属材料やセラミクスなどでも起こることが知られています。 クリープ現象の起こりやすさは温度と関係があることが判明しています。 一般に温度が高 いほど、クリープ現象が顕著になる傾向があります。

クリープ現象は構造上のさまざまな問題を引き起こします。たとえば、クリープによって 締結部分にガタがでたり、クリープ座屈と呼ばれる現象が起こったりします。クリープは 時間とともに進行するので、長期間使用する構造物では特に注意が必要です。

クリープは圧縮、引張、せん断の全ての応力に対して発生します。

クリープの発生原因はざまざまで、材料によっても異なります。以下では金属材料の 発生メカニズムを簡単に説明します。

金属のクリープ現象

金属のクリープ現象は、温度が高いほど起こりやすくなります。特に温度が絶対温度での 融点の半分近くになると顕著になります。

金属のクリープ現象がおもに問題になるのは高温で使用する機器についてです。この中に はエンジンや原子炉などが含まれるでしょう。

これらの機器の使用環境での温度は以下のようになります。

機器 温度 (K) クリープが問題になる累積時間
自動車エンジン 900K 3,000-7,000 時間
ジェットエンジン 1300K 1,000 時間程度
電球 2300K 500-1,000 時間

金属材料について、温度と応力の座標で発生するクリープの傾向を下図に示します。

温度とクリープメカニズムの関係
温度とクリープメカニズムの関係

金属で発生するクリープには主に以下の 3つのメカニズムがあります。

  • 粒界拡散クリープ
  • 転位滑り上昇クリープ
  • 格子拡散クリープです。

粒界拡散クリープ

粒界拡散クリープとは、粒界に沿って原子が移動することで発生するクリープです。粒界拡散クリープは全ての 温度で発生し、低温でのクリープ現象の主な原因となります。

粒界拡散クリープ
粒界拡散クリープ

転位滑り上昇クリープ

転位滑り上昇クリープでは、絶対温度で材料の融点の 0.3 ~ 0.5 倍程度の温度で発生し、クリープの支配的な原因になります。

転位滑り上昇クリープ
転位滑り上昇クリープ

転位滑り上昇クリープは、拡散クリープよりも大きなひずみを発生します。転位に対してせん断荷重が作用すると、転位の滑りと障害物による集積が起こります。

転位滑り上昇クリープではクリープひずみ速度は応力のべき乗に比例するので、べき乗則クリープとも呼びます。さらに低温環境と高温環境でも若干の違いがあるため、高温べき乗則クリープと低温べき乗則クリープに分かれます。

格子拡散クリープ

温度がさらに融点に近づくと、原子が非常に自由に動くようになります。この状態で起こる クリープを格子拡散クリープと呼びます。

金属クリープ現象の発生段階

金属で発生するクリープ現象は、下図のように遷移クリープ(Primary Creep)、定常クリープ(Secondary Creep)と3次クリープ(Tertiary Creep)の3つの段階からなり、それぞれの段階でクリープの発生メカニズムが異なります。

金属クリープ現象の発生段階
金属クリープ現象の発生段階

また、作用さ せる応力が大きくなると、クリープひずみの速度が増加し、それだけ早く破壊します。応力とひずみ速度の関係をグラフにとると以下のようになります。

クリープ現象の応力とひずみ速度関係
クリープ現象の応力とひずみ速度関係

遷移クリープ

金属に熱が作用すると、転位の移動が活発になります。金属内の応力分布によって応力の集中する部分に転位が集積し、結果として加工硬化と同じ現象が発生します。 この段階では硬化が起こるため、ひずみの進展速度は減少します。

定常クリープ

加工硬化が進展すると、集積した転位が最も安定した状態になろうとして再配置を起こします。これを組織回復とも呼びます。

定常クリープでは加工硬化と加工軟化が同時に発生するのでひずみの進展速度はほぼ一定になります。

次クリープ

定常クリープが進展した後、粒内破壊が発生し、クリープがさらに進展します。やがてぜい性粒界破壊が発生します。 

この段階では、加工軟化が進行するので、ひずみ速度は増加し、やがて割れが発生します。

以上の三段階は、転位の集積による加工硬化と、転位の組織回復による加工軟化のバランス によります。 遷移クリープでは加工硬化の進展が加工軟化の進展を上回っており、定常クリープでは拮抗しています。 3次クリープでは加工軟化が上回る過程と見ることができます。

NX Nastran のクリープモデル

NX Nastran のクリープモデルは、実験データから求まるパラメータを基礎式に割り当てる方法と、標準線形モデルをベースに減衰や剛性の関数を定義する方法があります。

クリープモデルでは、ク リープ特性だけでなく、 通常の材料特性も定義しておく必要があります。

NX Nastran でクリープ解析を行う場合、以下の項目を定義する必要があります。

  • 材料特性 (等方・異方性)
  • 材料のクリープ特性
  • 荷重の非線形解析オプション

また、クリープモデルは非線形静解析でのみ解析可能です。

テーブルモデル

テーブルモデルの場合、以下のばねダッシュポッドモデルの応力依存性の関数を参照しま す。

前もって [vs. 応力] で定義しておいた関数を Cp,Kp,Cs に割り当てることで、各パラメータを定義します。

テーブルモデル
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